古文を習った際、出会ったであろう色の名前。紅色(べにいろ)、薄紅(うすくれない)、猩々緋(しょうじょうひ)、藤色、浅葱色(あさぎいろ)、縹色(はなだいろ)、銀鼠(ぎんねず)、濡羽色(ぬればいろ)、漆黒。なんて美しい情緒あふれる呼び名でしょう。
この、一つ一つに物語をつくれそうな色の名前こそ、日本の色の魅力でしょう。
さらに襲の色目(かさねのいろめ)、色の組み合わせにも意味を持たせ、日本の人々は季節や情緒、格式や礼儀などを色で表現してきました。
日本の色の味わいは、自然や生活にまつわるものへの観察眼、さらに、色にまつわる様々な知識を得ることで深くなります。
上羽絵惣
今回は、長い歴史をもつ、絵具商さんをご紹介します。
『創業260年以上、本邦最古の絵具商。』
何とも京都らしい、長い歴史のあるお店なのですね。絵具商として、日本で最古なのだそうです。博物館にある、1751年以降の日本画の中には、こちらのお店の絵具を使ったものも多数あるのかもしれません。
宝暦元年(1751)
初代ゑのぐや惣兵衛が、京都市下京区燈籠町(東洞院通松原上ル)において、上羽絵惣(胡粉業)を創業。
約260年以上もこの地に根付き、皆さまに愛され続ける日本の伝統色を世に広める役割を担ってきました。
宝暦とは1751年から1764年までの期間を指し江戸幕府将軍は徳川家重、徳川家治です。ホームページより
大正元年(1912)
京都洛南の地に工場を設立し、日本画用・図案用・工芸用など日本で使われている殆どの絵具を製造。
品質向上のために日々研鑽し、新商品を創造してきました。大正ロマンが花ひらき、芸術作品はアール・ヌーボやアール・デコ様式に影響を受けました。
そこで現在のトレードマークでもある「白狐」のデザインを六代目が考案したと言われています。ホームページより
このかわいらしい白狐の図案は、大正ロマンの時代に生み出されたのですね。現代でも色あせることのない、レトロかわいいマークだけでも、100年の歴史あるものとは。
ホームページの情報によると現在も画材の販売はされています。しかし、日本画の書き手が減った現代、それのみを商品としていては、経営が難しいことは素人にも想像できます。
そして、今回ご紹介する「胡粉ネイル」が誕生したようです。
平成元年(1989)
それが平成22年(2010)に開発した水溶性の胡粉ネイルです。絵具の原材料となる天然素材の「胡粉」と色で「人に優しい」をコンセプトに開発された商品は、瞬く間に人気を誇り、今ではネイルのみならず、「胡粉石鹸」「恋する珠肌はんどくりーむ」「宝石リップ」など、多彩な商品を常に開発しつづけています。ホームページより
日本画、といわれると、自分には縁遠いもの、と感じる方が多いと思います。私自身もそうなので。でも、日本の色は、こんな形でも楽しむことができるんです。ぐっと身近になりますよね。
胡粉ネイル
胡粉とは、日本画の重要な白い絵具であり、ホタテ貝殻の微粉末から作られる顔料のことです。その天然素材の良い部分を取り入れた「胡粉ネイル」は、有機溶剤を一切使用していないため、「爪に優しく」「マニキュア特有の刺激臭がなく」「速乾性と通気性があり」「アルコールで落とせる」水溶性ネイルです。
上羽絵惣ホームページ
と説明される通り、原材料は貝殻。刺激臭は一切ありません。塗る直前だけ、ごくごくほのかに、絵具の匂いがしました。
小学生のころの、図工の時間を連想しますね。シンプルに色を塗るだけで、十分きれいに発色してくれます。
今回私が購入した色は「花菊」と「嵯峨鼠(さがねず)」
「花菊」は、大人びて、深い、茶に近い赤。「嵯峨鼠」はグレーの中に、ラベンダーの紫を感じる色合いです。
どちらも、秋冬の服に合う色味でした。
冒頭で、日本の色の魅力について触れましたが、このネイルはまさに、その色の楽しみを存分に味わえるアイテムです。
まず、ラインナップの色の名前。藍、漆黒、水浅葱、珊瑚など古くから認知される日本の色名も美しいですが天鵞絨(びろーど)、嵯峨鼠(さがねず)、金雲母撫子(きららなでしこ)など、マニキュアとして生み出された色の、その名前が何ともロマンにあふれています。
色見本を見ながら、ぜひお好きな色を探してみてください。
オンラインショップ
お洒落は、ほとんどが自己満足の世界。特にネイルは。TPOさえ間違えなければ、とことん自分のためです。色の些細な違いは、分かっているもの同士の、秘密の楽しみに。あるいは、自分だけに分かる励ましとして、生活に色を上手に取り入れてみては?
『日本の色・世界の色』(田村正隆 株式会社ナツメ社)という本には日本の色として263種もの色の名が紹介されています。
色の魅力が詰まった本
「日本の色 世界の色」(株式会社ナツメ社)
日本の色の魅力が詰まった、写真集のような図鑑をご紹介します。この本は何といってもそれらの色のものを写した写真が美しいのですが、日本の色だけでも、赤系統39、紫系統25、青系統30、緑系統39、黄系統26、茶系統70、白・灰・黒系統32、金・銀と、写真・色名の由来などの解説を詳しく紹介され、図鑑、色見本としても充実した情報が載せられています。
ご興味のある方は、ぜひ手に取ってみてください。
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