アニメ『平家物語』始まりましたね。
第一話、びわの生い立ちの描写の生々しいシーン、琵琶の音色と法師の語り、清盛の私利私欲への渇望。平重盛の、一門とは違う静謐な姿。第一話の中にも、すでに魅力的な要素があふれていました。
『平家物語』原文「禿髪」
今回は、『平家物語』の中から、びわを襲った悲劇、父の死を招いた”赤い直垂の禿髪たち”について、原本の文章を紹介します。
巻第一、「禿髪」より
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訳文
また、どのような賢王と讃えられる帝王の政治や、摂政関白の政務の処理であっても、世間の秩序からはみでた無頼者などが、人の聞いていないところでなんということもなく悪口を言い批難するのはよくあることであるが、この清盛の全盛時代には、平家に対して少しでも悪しざまに言う者はいなかった。
そのわけは、入道相国の策略として、十四から十五、六歳の子供を三百人集めて、髪を短く切りそろえ、赤い直垂を着せて、召し使われていたが、それが京のなかに満ちあふれるように往き来していた。そして、たまたま平家の事を批判する者でもいて、一人でも聞きつけると、仲間の者に告げ知らせて、その家におしかけ、乱入して、家財道具を没収し、その人物を捕えて、六波羅へ引っ立てていった。こういうことになるので、平家一門の専横ぶりを目で見、心にいきどおることがあっても、口に出して言うものはなかったのである。六波羅殿の禿とさえいえば、道を行く馬や車もよけて通る有様であった。皇居の門を出入りするときも姓名を尋ねられることもなく、都の役人たちは、この禿の行動を見て見ぬふりをしたのであった。
そのわけは、入道相国の策略として、十四から十五、六歳の子供を三百人集めて、髪を短く切りそろえ、赤い直垂を着せて、召し使われていたが、それが京のなかに満ちあふれるように往き来していた。そして、たまたま平家の事を批判する者でもいて、一人でも聞きつけると、仲間の者に告げ知らせて、その家におしかけ、乱入して、家財道具を没収し、その人物を捕えて、六波羅へ引っ立てていった。こういうことになるので、平家一門の専横ぶりを目で見、心にいきどおることがあっても、口に出して言うものはなかったのである。六波羅殿の禿とさえいえば、道を行く馬や車もよけて通る有様であった。皇居の門を出入りするときも姓名を尋ねられることもなく、都の役人たちは、この禿の行動を見て見ぬふりをしたのであった。
そろいの髪型、禿は髪の末を切り揃え、結ばないで垂らした子供の髪型。おかっぱのことです。この時代、童形は異形で聖性をおびるとされたのだそう。
そろいの着物、直垂は、平服の一種。左右の前身頃を引き違えて合わせて着る垂領(たれくび)の上衣と、同色の袴を組み合わせた装束です。角襟で胸紐があり、これを結んで前を留めて着用します。彼らは、赤い直垂で現れ、京の人々に畏れられたようです。
まさに、平家の目となり、耳となっていたのですね。
いかがでしたでしょうか。平家物語の魅力は、やはり、謡うような原文にあるように思います。少しでもお伝えできたら嬉しいです。
参考文献 岩波書店 校注者 梶原正昭 山下宏明 発行者 山口昭男 『平家物語』(一)[全4冊]
講談社学術文庫 新版 『平家物語(一)全訳注』 杉本圭三郎
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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