【平家物語】これこそ平家悪行のはじめなれ【アニメ1話 びわが吟じた原文】

びわ 平家物語

平家物語は、謡うような文面で、平安末期の世へ私たちを誘ってくれます。

アニメ「平家物語」第一話で吟じられていた部分について、抜粋しています。

末尾には、平家の家系図を載せています。合わせてご覧ください。

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巻第一「殿下乗合」

平家悪行のはじめ、とされたのは摂関家への報復

アニメ「平家物語」で、時折吟じられる、原文からの抜粋。第一話、平家が栄華を極め、そのうちに奢るようになっていく様が分かる一節。

「平家物語」では、平家と摂関家の間に起こったこの一つの事件が、『世の乱れそめける根本』『平家の悪行のはじめ』としています。

発端は平資盛が、当時の摂政・基房に対し礼を忘れたことでした。平資盛(すけもり)は、平清盛の孫で、平重盛の子。

資盛(すけもり)が鷹狩りに行った帰り、参内途上の基房に行会い、下馬の礼をとらなかったために、恥辱を与えられてしまいます。

それを聞いて、資盛の父・重盛はこちらに非があった、と捉え資盛をいさめます。このあたり、原文の通り、アニメが忠実に重盛の姿勢も写し取っていましたね。

しかし、清盛は何やら考えが浮かんだよう。重盛に相談はせずに、ことを起こすのです。

巻第一、「殿下乗合」より
殿下乗合1

殿下乗合2

殿下乗合3

黄色の部分はアニメで吟じられた部分です。

意訳

その後、入道相国(清盛)は小松殿にはなんの相談もなさらず、片田舎の侍で、武骨な、入道殿の命令以外には世に恐ろしいものはないと思っている剛の者ども、難波、瀬尾といった人をはじめとして、合わせて六十余名を召し集めて、「来る二十一日、天皇御元服の儀式の打ち合わせのために、殿下(摂政)が参内されるはずである。どこでもよい、お待ち申して、その行列の前駆・御随身どもの髻を切って、資盛の恥をすすげ」と命ぜられた。
殿下はこのような計略があるとは、夢にもお知りにならず、明年の天皇御元服、御加冠、拝官の御打ち合わせのために、しばらく宮中の宿所で御当直なさる予定で、常の参内よりも改まった御装いで(略)
六波羅の武士たちは、猪熊堀河のあたりで、すべて甲冑で武装した三百余騎で待ち受け申し、殿下を中にとり囲んで、前後から一度に、どっと時の声をあげた。今日を晴れと着飾ってきた前駆御随身どもを、あそこに追いかけ、ここに追いつめ、馬からひきずり落とし、さんざんに踏みにじって、一人一人の髻を切り放った。随身十人のうち、右近衛の府生武基も、髻を切られてしまった。なかでも、藤蔵人大夫隆教の髻を切るとき、武士たちは「これはお前の髻と思うな、お前の主人の髻と思え」と、言いふくめて切ったのであった。その後は、さらに御車の内へも、弓のハズを突き入れなどして、簾を引き落とし、御牛の鞦、胸懸を切り放し、さんざんに乱暴したうえ、勝どきを挙げて、六波羅へ引きあげてきた。入道は「よくやった、感心だ」と言われた。

殿下、とは摂政・基房その人。摂政の一行を清盛は襲わせます。

もとはと言えば、礼儀を忘れた資盛がいけなかったこと。13歳と若く、連れていた共も若かったため、礼を失してしまったのです。それを辱める摂政(摂関家)も大人げないでしょうが、まさか、数代前には殿上に上がることもできなかった平家に、このような報復をされようとは思っていなかったはずです。

アニメでの清盛の『面白かろう』というセリフ、原文を読んでいても頭に浮かびます。この事件で確かに彼は、一線を越えてしまったのです。

「平家物語」では、清盛のこの行動が、『平家の悪行のはじめなれ』とされたのです。

後に、清盛や重盛なき平家を必死に盛り立てた資盛。幼少の頃の失敗は、若気の至り、といったところでしょうか。アニメ「平家物語」10話の中では、びわに

「語り継ぎたい」
「ま、俺なんぞは登場しないだろうが」
「する、重盛も維盛も資盛も清経も、敦盛も、みな」
「そなたが登場するのは、殿下の乗合事件が最初であろうな。」

と宣言されていましたね。

幼少の資盛の些細な失敗は、しかし基房と清盛の意地の張り合いで、大事へと発展してしまい『平家悪行のはじめなれ』という、清盛の暴挙を呼んでしまいました。

いかがでしたでしょうか。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

 

参考のために、平家の家系図も作成しました。参考に御覧下さい。図はクリックで拡大できます。

 

平家家系図 4

次の記事 【平家物語】娑婆の栄華は夢の夢【アニメ2話 びわが吟じた原文】

 

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